第16章 恩返し

「菜津美は……あの子、あまりにも我が強くてな。俺の言うことなんて、まるで耳に入らん」

有村父は大きく息を吐いた。鍋の湯気の向こうで、疲れた目を細める。

「いろいろ察してはいる。お前がどうやって支えてきたのか、細かいところまでは分からん。だがな……お前がいなけりゃ、菜津美が今みたいにやれてるはずがない。それだけは分かる」

有村父は、まだ耄碌していなかった。

工藤達央がいなければ、有村菜津美の会社は江北の財界で一歩も進めなかっただろう。

江北のビジネス界は、三分の二を代々商売を営んできた名家が牛耳っている。そんな連中が、有村菜津美のような新しく勢いを伸ばしてきた会社を、黙って受け入れる...

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